M&A・相続・事業承継のM&A DX

M&Aリサーチ

M&A DX M&A research

企業の現在価値とは?計算方法もわかりやすく解説します

公認会計士 加藤大典

公認会計士 加藤大典

大手自動車メーカーに入社、生産技術部にて製造工程設計業務に携わる。 その後、デロイトトーマツコンサルティングに入社し、組織再編により有限責任監査法人トーマツのアドバイザリー部門に異動。 製造業の法定監査業務及びIFRS導入支援、組織再編支援、事業再生支援、内部統制構築支援、決算早期化支援、経営管理体制強化支援等の様々なプロジェクトに従事。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

企業にはさまざまな価値がありますが、「現在価値」とは具体的には何を指しているのでしょうか。M&Aを検討している企業がある場合は、特に相手企業の現在価値が気になるところです。

この記事では、M&Aを成功裏に進めたい方向けに、企業の現在価値とは何か、どうすれば計算することができるのか、また現在価値以外の価値とその計算方法について解説しています。また、M&Aを実施する上で、相手企業の現在価値を把握する方法についても紹介していますので、ぜひご覧ください。

本記事のポイント

  1. M&Aを成功裏に進めたいと考えている方向けの記事です。
  2. 企業の現在価値の求め方や他の価値の求め方、現在価値に影響を与えるものについて、具体例も紹介しつつ丁寧に解説しています。
  3. 相手企業の現在価値を把握する方法についても紹介しています。
お問い合わせの電話番号0120061279

現在価値とは予想利益から算出した今の価値

現在価値とは予想利益から算出した今の価値

現在価値(PV、Present Value)とは、将来受け取ることができるお金について、現時点の価値に計算し直した金額のことです。例えば銀行に年1%の金利でお金を預け、1年後に1,000万円を受け取れることが分かっていたとしましょう。

この1,000万円は将来の価値ですが、現在の価値に換算した金額が現在価値です。将来価値から現在価値を求める際には、以下の計算式を用います。

●将来受け取れる金額÷(1+金利)=現在価値

実際に数値を当てはめてみましょう。将来受け取れる金額(将来価値)は1,000万円、金利は1%=0.01なので、現在価値は9,900,990円と計算できます。

●10,000,000÷(1+0.01)=9,900,990…

現在価値と投資額の差が正味現在価値

現在価値と似た言葉に「正味現在価値(NPV、Net Present Value)」があります。正味現在価値は、以下の式で求められるでしょう。

●正味現在価値 = 現在価値 - 投資額

例えば、現在900万円を、年1%の金利で銀行に預けているとします。あるプロジェクトに900万円を出資すれば、来年1,000万円受け取れることが確約されているとしましょう。このプロジェクトには出資したほうがよいと考えられるでしょうか。

判断する際には正味現在価値から求めることができます。先程の例から、年1%の金利でお金をあずけ1年後に1,000万円を受け取る場合の現在価値は9,900,990円と算出できました。正味現在価値は以下の計算式により、900,990円と求められます。

●9,900,990円(現在価値)-9,000,000円(投資額)=900,990円(正味現在価値)

正味現在価値が正のときは投資価値あり

現在価値が投資額よりも大きいときは、正味現在価値は正の数になります。今回の例でも現在価値が投資額よりも大きかったため、正味現在価値は約90万円と正の数になりました。言い換えれば、そのまま銀行に預けているよりもプロジェクトに出資するほうが90万円ほどの利益を手にできるということになります。

このように正味現在価値が正のときは「投資価値がある」と判断することができるでしょう。反対に、正味現在価値が負の数のときは損失を被る恐れがあり、正味現在価値が0のときは損をしないけれども投資する価値もないと考えられます。

正味現在価値が正の数かどうかを確認しておくことで、リスクをある程度回避しやすくなるでしょう。

現在価値を知る上で知っておきたい数値

現在価値を知る上で知っておきたい数値

お金の動きが管理しやすく年利が分かっている場合は、現在価値を求めることは難しくはありません。しかし、企業の現在価値を求める場合には、さまざまな要素や価値が絡むため、預金のように簡単に計算することはできないでしょう。

企業の現在価値を求める上で知っておきたい数値には、「キャッシュフロー」と「継続価値」、そして「企業価値」があります。これらについても求め方を見ていきましょう。

キャッシュフロー=現金の出入り

事業を進める際に、収入ばかり、支出ばかりということはあり得ません。当然のことではありますが、現金の出入りが発生するでしょう。これを「キャッシュフロー(cash flow)」と呼び、お金の流れを把握する数字として用いられることが一般的です。

キャッシュフローは以下の計算式で求めます。

●キャッシュフロー=キャッシュイン−キャッシュアウト

キャッシュインとは入ってくるお金、キャッシュアウトとは出ていくお金です。収支を把握することで、キャッシュフローも把握できるようになります。

継続価値=継続的な利益÷金利

「継続価値」とは、継続的に得られるであろうと予測される利益のことです。

例えば年5%の利益を受け取れるファンドがあったとします。このファンドにお金を預け、毎年200万円の利益を得ているとしましょう。継続価値は計測的な利益を金利(年利)で割って求めますので、以下の計算式から4,000万円となります。

●2,000,000円(継続的な利益)÷5%(金利)=40,000,000円(継続価値)

つまり4,000万円の資本があれば、毎年200万円を継続的に受け取ることができると考えられるのです。

将来のことが予想しにくい企業経営ですが、キャッシュフローや配当、利益などから今後生じると思われる継続価値を予測できることがあります。

企業における継続価値はDCF(Discounted Cash Flow)法で求めることが一般的です。DCF法で求めた数値が多いと、将来的に会社に入り込むキャッシュフローが大きくなると判断できるでしょう。

なお、DCF法は次に紹介する「企業価値」を求める際にも用いられることがあります。

企業価値=継続的キャッシュフロー÷割引率

企業価値とは、今後継続的に生じると予測されるキャッシュフローを割引率で割ったもののことです。割引率はリスクとも置き換えられます。つまり、継続価値が予想通りの利益が得られるときの理論上の数値とすると、企業価値とは企業や資本の増減を考慮した数値と考えることもできるでしょう。

先程の例で考えてみます。年間5%の利益を受け取れるファンドで毎年200万円の利益を得ているならば、継続価値は4,000万円と計算することができました。

しかし、この計算では利益が変化することに関しては考慮されていません。利益が年1%の割合で増えると仮定するならば、企業価値は以下の式から5,000万円と求めることができます。

●2,000,000円(継続的な利益)÷(5%-1%)=50,000,000円(企業価値)

利益が減る場合も考えられるでしょう。例えば年3%の割合で利益が減る場合には、以下の式から企業価値は2,500万円と求められます。

●2,000,000円÷(5%+3%)=25,000,000円

割引率とリスクの考え方

割引率とリスクの考え方

理論上の継続価値を知ることよりも、実際の企業成長に基づいた企業価値を知るほうが、より現実に近い企業の価値に迫ることができるでしょう。企業価値を求める際には「割引率」についての理解も求められます。

割引率とは、将来受け取れる現金から現在価値を求める際に用いる数値です。先程の例では、割引率は金利を指しました。割引率が大きいときは現在価値が小さくなり、反対に割引率が小さいと現在価値は大きくなります。

割引率は金利だけではありません。例えばM&Aの際に株主に利益の一部を支払う「株主資本コスト」も、割引率として使用されます。割引率が複数あるときは、すべての割引率を考慮しつつ、結果を見ながら取捨選択して、企業価値を求めることができるでしょう。

また、割引率は投資リスクの影響を受けて変動することにも対応できます。例えばリスクが高い投資には割引率を高くすることで、危険性を考慮した企業価値を求められるようになるでしょう。反対にリスクが低い投資に関しては割引率を低くし、確実性が高い数値を求めます。

現在価値と企業価値の関係

現在価値と企業価値の関係

企業価値を算出する方法にはいくつかありますが、広く使用される方法のひとつに「インカムアプローチ」があります。インカムアプローチとは将来的な収益を企業価値と考える方法です。将来得られる現金の現在価値を年ごとに求め、合算した数値を企業価値と考えます。

その他にも、コストアプローチによって企業価値を算出することができるでしょう。これは現時点の純資産に着目して将来の価値について考慮しない方法のため、収益が予測しにくい業界の企業価値を求める場合には優れた手法といえます。

一方、マーケットアプローチは同業他社や類似業種などの株価や指標を用いて企業価値を求める方法です。これも将来的な収益を考慮しないため、現時点での価値が企業価値を左右します。ただしマーケットアプローチを利用して企業価値を測ることができる企業は、株式が上場している場合に限られるという点に注意しましょう。非上場企業に関しては、マーケットアプローチだけでなく、その他の手法を組み合わせて企業価値を算出することが一般的です。

関連記事「企業価値評価とは?おもな算出方法のメリットとデメリットも解説

現在価値を知ることはなぜ必要?

現在価値を知ることはなぜ必要?

インカムアプローチを用いて将来的な収益を考慮した企業価値を求める際に、現在価値は欠かせない要素です。その他にも、現在価値を知ることには次のようなメリットがあります。

将来の収益を知るため

M&Aを実施する際、相手企業が将来的にどの程度の収益を得られるのか知っておくことが重要です。将来的に大きな収益を生み出すことが予測されるなら、現時点の株価や純資産が低い企業でもM&Aの相手企業として検討することができるでしょう。

また、利益をある程度予測することで、M&Aの際に支払う価格を妥当なものに近づけることができます。

現在の資産に左右されない将来性を知るため

純資産が多ければ、ある程度は企業価値を維持する担保となりますが、資産には限りがあるため、キャッシュアウトがキャッシュインを超える状態が継続すると、資産がなくなり企業価値も低いものとなってしまいます。

純資産や株価といった現時点での資産価値に惑わされることなく、企業の将来性を判断するためにも、現在価値を知っておきましょう。

実際に現在価値を求めてみよう

実際に現在価値を求めてみよう

では実際に現在価値を求めてみましょう。上述の通り、1年後に受け取れる金額が分かっているときは以下の式で求めます。

●現在価値=将来受け取れる金額÷(1+割引率)

なお、割引率としては、金利だけでなく株主資本コストなどの他の数値が設定されることもあります。

次に、数年後先に受け取れる金額が分かっている場合の現在価値を求める計算式について見ていきましょう。毎年の利益が現金として払い戻されるのではなく、利益も資本に組み込まれる(複利計算)場合について考えます。N年後の利益は以下の式で計算できるでしょう。

●現在価値=将来受け取れる金額÷(1+割引率)^N

^NはN乗を表します。例えば2年後に受け取れる金額が分かっている場合の現在価値は次のように示せるでしょう。

●現在価値=将来受け取れる金額÷(1+割引率)÷(1+割引率)

割引率が5%で将来受け取れる金額が1,000万円として考えてみましょう。何年後の将来を想定しているかによって現在価値は以下のように変化します。

●1年後に1,000万円を受け取れる場合の現在価値
:1,000万円÷(1+0.05)=9,523,809…

●3年後に1,000万円を受け取れる場合の現在価値
:1,000万円÷(1+0.05)^3=8,638,375…

●5年後に1,000万円を受け取れる場合の現在価値
:1,000万円÷(1+0.05)^5=7,835,261…

受け取れる金額が同じでも、想定している未来が遠いと現在価値は低くなります。また、想定している時点が遠いということは、その間に思わぬリスクが生じる可能性が高いということです。割引率を何に、あるいはいくらに設定するかによって、現在価値に大きなばらつきが生じるでしょう。

投資額を差し引いて正味現在価値を求めよう

現在価値から投資額を差し引くと、正味現在価値を求めることができます。

例えば割引率が5%で将来予想される金額が1,000万円の投資商品があるとします。ここでの投資商品としては株式や企業なども想定できるでしょう。この投資商品を800万円で購入すると正味現在価値はどの程度になるでしょうか。

●1年後に1,000万円を受け取れる場合の正味現在価値
:9,523,809円-8,000,000円=1,523,809円

●3年後に1,000万円を受け取れる場合の正味現在価値
:8,638,375円-8,000,000円=638,375円

●5年後に1,000万円を受け取れる場合の正味現在価値
:7,835,261円-8,000,000円=-164,739円

前述の通り、正味現在価値がマイナスのときは投資価値がないと判断できるでしょう。つまり、5年後に1,000万円を受け取れることが分かっている割引率5%の投資商品には、800万円の資本を投入する価値はないと考えられます。反対に、1年後あるいは3年後に1,000万円を受け取れることが予想される場合は、割引率が5%であれば十分に投資の価値があると判断することもできるでしょう。

現在価値は財務状況や金融情勢の影響もある

現在価値は財務状況や金融情勢の影響もある

現在価値に影響を与えるのは金利などの分かりやすいものだけではありません。理論通りにはいかないものであるということを常に頭に入れておきましょう。

M&A仲介会社に査定を依頼しよう

現在価値を求める際にはさまざまな要素が絡むため、計算することは容易ではありません。M&A仲介業者に査定を依頼し、多角的に現在価値を計算してもらいましょう。

相手会社の査定も依頼できる

現在価値以外にもさまざまな要素で相手会社の査定を行うのがM&A仲介業者の役割のひとつです。査定において、「デューデリジェンス」にも注力しています。

デューデリジェンスの重要性

デューデリジェンスとは、財務状況だけでなく法務や人事などのあらゆる側面から企業をトータルに査定する行為のことです。外部からは知り得ない情報も探っていきますので、簿外債務などの事前に把握しておきたいリスクも明らかになります。

関連記事「デューデリジェンスとは?意味や目的、実行のポイント

客観的な意見も参考にしよう

相手企業を自己判断するのも良いですが、M&A仲介会社による客観的な意見を参考にすることで、M&Aの失敗を回避しやすくなります。成功裏にM&Aを進めていくためにも、ぜひM&Aの専門家であるM&A仲介業者に依頼しましょう。

まとめ

まとめ

企業の現在価値を求める際、割引率をどう設定するかが鍵を握ります。割引率の設定からデューデリジェンスまで依頼できるのがM&A DXの強みです。

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関出身者等が多数在籍しています。M&Aや相手企業の価値判断でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。